今日はドイツ人が効率よく働ける理由の1つとして、 job description (職務内容)が存在することから考察したいと思います。
そもそも job description (職務内容)とは何?
job description (職務内容)がはっきりしていると、どんな風にいいの?について書いてみようと思います。
目次
Job description (職務内容)とは?
Job description (職務内容)とは、仕事をする際の業務内容が書かれた文章のことを言います。この中にはやるべき仕事の内容(進め方)、必要な知識・資格、求められる適性などが書かれています。日本企業ではあまり存在しないようですが、日本でも外資系企業であれば用意されていることがほとんどです。
就職・転職・転籍(社内の部署移動を含め)をする際には必ず目を通すものであり、雇い主・上司と従業員が双方で納得して初めて契約(サイン)します。
job description (職務内容)というものについては理解したけれど、それがある場合とない場合、どんな風に日々の仕事に変わってくるのだろう?と思われた方はいらっしゃいませんか?やるべき仕事について事前に書面にて承諾するかどうかと思っていませんか?紙1枚(数枚)かもしれませんが、実は仕事の進め方も異なるんですよ〜!
job description (職務内容)があると、①効率よく部署(人員)を配置する
前提として、そもそも今自分が向き合っている仕事が本当に自分がすべき仕事かどうか向き合ったことはありますか?前任者がやっていたから、同僚もやっているからといった理由で、やっている業務はありませんか?
よく考えたらこれって隣の部署がやった方が知識も経験もあるし、似た業務を常にやっているんだからきっと効率がよく出来るはずと思ったことはありませんか?
残念ながら効率よく部署や人が機能していない理由の1つに、job description (職務内容)の有無が関係してくることがあるのです。
というのも、job description (職務内容)を作成するということは、会社の上層部は包括的に仕事の内容・進め方を考えます。その結果、然るべき部署・人が効率よく担当できるよう整えるはずなんです。そう、このjob description (職務内容)が作成されていれば、効率よく部署・人を配置できるのです。ただjob description (職務内容)が作成されていないばかりに、会社の業務全体を包括に見ることができず、複数の部署で重複している業務内容があったり、漏れている業務が出てきます。その場合、その業務をやる・やらないが上司の鶴の一声で決まったり、人間性で決まったり・・・といった筋の通っていない決め方で決まることがあります。
(ドイツは筋が通っているかどうかは、ものすごく大切な考え方です。筋が通っているものに関しては上司・部下関係なく意見を通す事ができますが、反対に説明できない=筋が通っていないものは皆が納得できず議論することすらできない事が多いです)
job description (職務内容)があると、②やるべき仕事が明確になり、集中できる
例えば本当にこの仕事を自分でやるべきかどうか、迷うことがあると思います。特に上司や先輩から頼まれて、これって本当は自分がやるべき仕事じゃない・・・と思っても頼まれる人が上司や先輩だと断りにくいもの。でもこのjob description (職務内容)があれば、これは私のやるべき事ではないと明確に分かるので、担当の部署の方にやっていただくようお願いが出来ます!
反対にこのjob description (職務内容)が無いことを想像するだけで、正直なところ自分は何をどこまでやれば良いのか、不安な気持ちになります。日本企業は先輩や同僚から教えられて仕事を覚え、職務を遂行していくようですが、やり方にズレがあったり、人によって同じ部署に所属していても○○の業務をやる人、やらない人はいませんか?
つまり、job description (職務内容)があれば、自分がやるべき仕事なのかどうか自分だけでなく、他人から見ても線引きが容易にできるようになります。
繰り返しになりますが、やるべき仕事が明確なので、もしやっていなかったら責められることもありますが、やらなくていいことは無駄にやる必要はありません。他の人がやるべき仕事を自分で抱える必要はなく、然るべき部署・人に頼めば良いのです。
job description (職務内容)があると、③(上司も従業員本人も)評価しやすい
最近日本企業でも実力主義を導入する会社が増えてきたと新聞で読みました。このjob description (職務内容)は評価にも使えます。
何しろやるべき事が明確になっているので、やっているかどうか評価しやすくなります。それも上司だけでなく、実際職務にあたっている従業員本人もです。
よって自分自身が評価したい事、今後改善していきたい事も分かりやすく気づく事ができるでしょうし、上司は上司でその人の事をどう評価し、伸ばしていくのか提案しやすくなるのでしょうか。
ドイツでは実力主義が普通で、年功序列という考え方はありません。そもそも入社年度・入社時期・入社した時の経歴や年齢も異なる事がほとんどなので日本のように横一列で比較する事ができる環境ではありません。
そういったときに、誰もが納得できるような成果を残す人はやはりどんどん出世していきます。その際にもこのjob description (職務内容)が明確な評価ポイントになります。私が勤めている会社も毎年のボーナスの査定では、必ずjob description (職務内容)と照らし合わせ双方が評価し、最終的に達成率を双方が納得する形で決めます。job description (職務内容)があるおかげで、双方の評価にズレは少なく、もめる事もほぼありません。そして翌年の目標もjob description (職務内容)に沿った内容で中身を充実させる形で来年の目標を決定します。
よってjob description (職務内容)を導入する事で日々の仕事のあり方だけでなく、将来を見据えた働き方を考える事ができるツールでもあるのです。
job description (職務内容)があると、完璧なの?不都合は?
どんなことでもそうですが、残念ながら100%完璧なものは難しいですね。このjob description (職務内容)も一部弊害はあります。
ドイツでよく見る光景1つですが、このjob description (職務内容)がはっきりしすぎているために、「この仕事は私の仕事ではありません」と言われることがよくあります。少し修正してメールを転送してくれるだけのような数分で終わるような事も、平気で断り、本当にやってくれません。その人のjob description (職務内容)でやるべき業務でなければもちろんやる必要がないので(本当に融通がきかず)やらないですし、本来の担当者に時間をかけて説明して、やってもらうという事も多々あります。本来の姿なので誰も文句は言えません。
もし本当にこれが非効率であれば、job description (職務内容)の内容を変えてもらう必要があります。もちろん変更も不可能ではないので、明確な理由があったり、新しい業務を始める際にはjob description (職務内容)が更新される事も度々あります。
もう1点挙げるとすると、採用に関してです。ドイツが契約社会であるがゆえの結果かもしれませんが、紹介しておきます。
このjob description (職務内容)は職務契約において重要な内容であるため、入社する際にjob description (職務内容)に沿った仕事ができると思って入社したとしても、実は採用されたら別の業務に充てられる時間が多いといった事が判明する事もあると思います。ドイツ人の多くは、自分は提示されたjob description (職務内容)だからこの会社に入社したのに、実際の業務とは異なることを人事・上司に訴えることもできます。(会社側も、雇った従業員がその職務を遂行していないと分かった場合には、本人に厳しく注意できますし、降格や最悪解雇という事もあり得るかもしれません)その場合、契約しているjob description (職務内容)と実際の業務が異なる場合、間違えなく会社はjob description (職務内容)に沿った内容の業務を与えるか、もしその人が退職を希望すればそれに従う必要があります。弁護士などをつければ会社は賠償金などを支払う必要が出てくる場合もあるかもしれません。
よって、job description (職務内容)は雇い主・上司と従業員が双方で納得して初めて契約(サイン)するものなのです。
まとめ
job description (職務内容)は完璧ではないものの、得るものは多いと思います。日本企業がドイツ企業・ドイツ人と比べて労働時間は明らかに長いのに効率よく働けていないように見えるのは、job description (職務内容)の有無も関係しているのではと気づいた事がきっかけでした。
やるべき事が明確だと、人は目的達成のために最短ルートで事を運ぼうとすると思います。でも仕事の全体像が見えていなかったり、配置されている形が効率的でなかったり、そもそもやるべき事が明確でなかったら時間がかかるのは当然ではないのでしょうか。
もちろん最初は皆新しい働き方・評価に慣れないかもしれません。でも慣れれば、本当に便利な体制だと言えます。従業員に取ってみれば自分を守るものでもあり、求められる以上の内容を達成できれば他部署に移るきっかけになったり、転職にも有利に運ぶかもしれません(自分がどんな事をしてきて、どんな成果を上げてきたのかを的確に示すものってなかなか他にないですよね!?)
もしjob description (職務内容)を導入していない会社・部署があればぜひ導入してください!!